なぜMEO・SEOの順位ツールは“同時に”止まるのか|Googleがスクレイピングを締め出した2年間の全記録【SearchGuard・num=100廃止・SerpApi訴訟】

蛇口(Google)の上部ハンドルを手で締めると、そこから給水される複数のツール(ダッシュボード)が同時に止まることを表すイラスト。

 2025年、中小企業や店舗が使うSEO・MEO※の順位計測ツールが、まるで示し合わせたように“同時に”止まる。そんな現象が何度も起きました。海外の大手ツールが世界同時に停止し、国内のツールも相次いで「順位が取得できない」と告知する。原因は、ほぼ毎回「Googleによる仕様変更」でした。

 結論を先に述べます。SEO・MEOの順位データは、大半が「Googleの検索結果を機械的に取得(スクレイピング)する」という単一の“水源”に依存しています。2025年、Googleはこの水源の蛇口を3段階で締めました。技術的な封鎖(①JavaScript必須化=SearchGuard)、コスト構造の破壊(②num=100廃止)、そして法的な封鎖(③SerpApiの提訴)です。その結果、業界全体が同時多発的に止まり、サービスの提供を終了した国内ツールも出ました。本記事は、この2年間に何が起きたのかを、一次ソースを突き合わせて時系列で記録します。

 私はMintSparkで自社のMEO支援ツール「coremeo」を開発・運営し、情報処理安全確保支援士でもあります。ツールを“作る側”として、また一次情報を突き合わせて調べた立場から、できるだけ事実に忠実に整理します。なお、後述するGoogle対SerpApi訴訟は現在も係争中で、「スクレイピングは違法」と確定したわけではありません。その点も含めて、断定しすぎないように書きました。

目次

なぜ順位ツールはスクレイピングに依存するのか

 そもそも、なぜ“力技”のスクレイピングが必要なのか。答えはシンプルで、「特定の場所で検索したとき、自店(自サイト)が何番目に出るか」を返す公式APIが存在しないからです。公式の「Places API」は場所の詳細情報を返すもので、競合を含めた検索順位は返しません(参考:Google)。「Business Profile Performance API」は自店のインプレッションや電話・ルート検索などの実績を返しますが、これも“自店のパフォーマンス”であって“順位”ではありません(参考:Google)。

 つまり、利用者が実際の画面で見る順位を出すには、検索結果ページ(SERP)を直接取得する、つまりスクレイピングするしか方法がありません。取れるデータと取れないデータを整理すると、次のようになります。

データ項目公式API(Places/Business Profile Performance)SERPスクレイピング
自店の表示回数(検索・マップ)○ 取得可(BUSINESS_IMPRESSIONS_DESKTOP_SEARCH/MOBILE_SEARCH/DESKTOP_MAPS/MOBILE_MAPS)
電話タップ数・ルート検索数○ 取得可(CALL_CLICKS/BUSINESS_DIRECTION_REQUESTS)
ウェブサイトのクリック数○ 取得可(WEBSITE_CLICKS)
任意の緯度経度でのローカルパック実順位× 提供なし○ 直接取得が必要
競合を含むグリッド順位・ヒートマップ× 提供なし○ 各地点でのSERP取得が前提

 単純なプログラムでGoogleにリクエストを送るとボット検知に即ブロックされるため、各ツールは PuppeteerPlaywright といったヘッドレスブラウザ(画面のないブラウザ自動化)と、一般家庭の回線に見せかける「レジデンシャルプロキシ」を併用して、“ふつうの利用者”を装ってアクセスする、といった手法がとられます。JavaScriptの実行が必須になったことで、こうした取得の手間とコストは大きく増えました(参考:Search Engine Land)。この構造こそが、次に述べる同時多発停止の温床でした。全員が同じ水源(Googleの検索結果)を、同じような手口で汲んでいる。だから、Googleが蛇口を締めると、みんな同時に止まるのです。

 ここで、法律とは別のレイヤーの話を補足します。順位取得のためにGoogle検索へ自動でアクセスする行為は、それが合法か違法かという議論とは別に、Googleのスパムポリシーおよび利用規約では明確に禁止されています。Google 検索セントラル(Google Search Central)は「機械生成トラフィック」として、ランキングの確認を目的としたスクレイピングを明示的に挙げています(出典:Google 検索セントラル)。つまり、訴訟の結論を待つまでもなく、規約・ポリシーの面ではすでに「認められていない行為」である点は、押さえておく必要があります。

Googleが蛇口を締めた3つの転換点(2025年)

 2024年後半まで、海外API・国内ツールともに大規模障害の公式記録はほぼ皆無でした。潮目が変わったのは2025年1月です。以下は、確実な一次ソースが現存する“確度の高い”事実だけを並べた記録です。

2025年にGoogleが行った3つの規制のタイムライン(1月JavaScript必須化・9月num=100廃止・12月SerpApi提訴)
時期Google側の動き連動して起きたこと(海外・国内)
2025年1月検索のJavaScript必須化(後に「SearchGuard」と判明)海外SEOツールが世界同時に停止/国内では順位チェックツールが相次いでエラー/MEOツールも「Googleの仕様変更が原因」として一時停止
2025年9月num=100 パラメータの廃止取得コストが実質10倍に。更新頻度の削減・値上げ・計測範囲の縮小が各社で発生。国内の大手順位チェッカーが年内終了へ
2025年12月Google対SerpApi訴訟(DMCA §1201)技術的封鎖から“法的封鎖”の段階へ。以後、SERP取得業界に法務リスクが常態化

① 2025年1月:JavaScript必須化(SearchGuard)=第1波

 2025年1月中旬、Googleは検索の利用にJavaScriptの実行を必須化しました。GoogleはTechCrunchに対し「ボットやスパムから守るため」と回答しています(参考:TechCrunch)。このとき導入されたボット検知の仕組みが「SearchGuard」(JavaScriptチャレンジで本物の利用者かを検証する仕組み)であることは、後述する2025年12月の訴状で明らかになりました(参考:Search Engine Land)。

 影響は世界同時でした。国内でも順位取得ツールが軒並みエラーとなり、当時の状況は複数の第三者記録に残っています(参考:SEMリサーチ)。定点観測に使われる順位チェックツールでは、2ヶ月以上にわたって順位取得エラーが続いた例もありました。MEOツールの側でも、ロカオプが「2025年1月18日ごろより発生」「原因はGoogleによる仕様変更」と、日時付きで公式に告知しています(参考:ロカオプ 障害情報)。

② 2025年9月:num=100 パラメータ廃止=第2波

 2025年9月、Googleは検索URLに付ける &num=100 パラメータ(1回で100件まで表示できる仕様)を廃止しました。多くの順位チェックツールは、これを使って「1リクエストで100位まで」を安く取得していたため、取得コストが一夜で約10倍になり、各社の対応は「計測範囲をTop20などに縮小」「更新頻度を半減」「値上げ」に収斂しました(参考:ナイル鈴木謙一氏)。

 ここでアーキテクチャによる被害の二極化が起きました。BrightLocalは、グリッド(geo-grid)型のヒートマップ計測は影響が小さい一方、上位を深く取得する型は直撃を受けた、と明言しています(参考:BrightLocal)。国内では、この変更の直後に、大手の順位チェッカー(GMO順位チェッカー)が新規登録を停止し、年内でのサービス終了を発表しました(参考:第三者による記録)。

 副次的な影響として、Google Search Console のインプレッションが多くのサイトで急減しました。これは、これまでのインプレッションに、ツールのボットアクセス由来の“水増し”が混ざっていたことが、変更によって可視化されたものと考えられています(参考:Search Engine Land)。

③ 2025年12月:Google対SerpApi訴訟=“法的封鎖”へ

 2025年12月19日、Google LLC は、検索結果スクレイピングの大手APIベンダーである SerpApi, LLC を、米カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提訴しました(Google LLC v. SerpApi, LLC, Case No. 4:25-cv-10826, N.D. Cal.)(参考:Google公式ブログJustia)。主張の柱は、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)第1201条。これは、技術的保護手段の“回避”を禁じる条項で、DVDのコピーガード破りを禁じるのと同じ条項として知られます。Googleは、SerpApiが前述のSearchGuardを回避し、著作権コンテンツを大規模に取得・再販していると訴え、その自動リクエストは過去2年で最大25,000%増え1日あたり数億件に達すると述べています。

本訴訟は「係争中」

 SerpApiは全面的に争っています。2026年2月20日に却下申立て(Motion to Dismiss)を提出し、「アクセスしているのは誰でも見られる公開ページで、暗号や認証を破ってはいない」「DMCAは著作物へのアクセス制御を守る法であって、広告収益を守る道具ではない」などと反論しています(参考:SerpApi公式ブログThe Register)。本記事の執筆時点で結論は出ておらず、「スクレイピングは違法」と確定したわけではありません。

見えてきた構図:全員が「Googleという単一水源」に依存している

 ここで重要なのは、因果の向きです。「海外APIが落ちたから国内ツールが落ちた」という単純な連鎖ではありません。調べた限り、国内のツールが特定の海外API(SerpApi等)を使っているという直接証拠は見つかりませんでした。確認できるのは、「国内ツールの障害原因が常に“Googleによる仕様変更”であり、その発生時期が海外勢の障害と重なる」という、強い状況証拠の連鎖です。

 つまり起点は、海外APIでも国内ツールでもなく、Google自身のスクレイピング対策強化です。海外SERP API・海外ランクトラッカー・国内順位チェッカー・国内MEOツールは、みな同じ「Googleの検索結果」という水源に依存しているため、Googleが仕様を変えた瞬間に、国境やジャンルを越えて同時に止まる。これが、2年間で最も再現性の高いパターンでした。

 もう一つ、調査で分かったことがあります。国内MEOツールで、Googleの仕様変更起因の障害を日時付きで公式に開示しているのは、確認できた範囲ではロカオプのみでした。他社は障害告知を公開していない(契約者限定や非公開の可能性がある)だけで、同種の障害が起きていなかったとは言えません。ただし、これはあくまで推認です。ここでは「公開告知を確認できたのはロカオプのみ」という事実の記述に留めます。むしろ、障害を誠実に開示している姿勢は、ツールを選ぶ側にとって重要な判断材料になります。

ツール選定で見るべき2点(この記事の実益)

  • 障害を公開しているか:Googleの仕様変更起因の不具合を、日時付きで告知しているか(=誠実さと運用体制の目安)
  • 順位の取り方(アーキテクチャ):グリッド(geo-grid)型か、上位N件を深く取る型か。2025年9月の変更では前者は影響が小さく、後者は直撃した

あなたのツールで「順位が更新されない」なら

 ここまでの話は、中小企業で店舗を運営する立場からは「うちのMEOツール、最近ずっと順位が反映されないな…」という体験に直結します。まず、混同しやすい2つを仕分けておきましょう。

混同しやすい2つの整理

  • 「順位が上がらない」=あなたの実際の順位が伸びない話です。原因はNAP不統一・カテゴリ・口コミ・反映待ちなど。対策はMEOの基本施策MEO対策の完全ガイドへ。
  • 「ツールの順位が更新されない・反映されない」計測(データ取得)側が止まっている話です。原因の多くは、ここまで述べたGoogle側の仕様変更です。本記事はこちらを扱います。

 もし「設定は何も変えていないのに、ある時期から順位だけが更新されない・圏外扱いになる」なら、それはあなたの店舗やツールの“手抜き”ではなく、ここまで述べたGoogle側の構造変化である可能性が高いです。ツールの乗り換えを焦る前に、提供元が障害情報を告知していないか、計測の仕様変更を案内していないかを確認してください。そして、ここが本質ですが、ツール上の順位に一喜一憂すること自体を、少し頭から抜き去ることをおすすめします。

「順位の監視」から「成果と自動化」へ

 そもそも、店舗オーナーにとって「ツール上の順位が1位か4位か」は最終目的ではなく、中間指標であると私は考えています。しかもローカル検索の結果は、利用者の現在地や検索履歴で細かくパーソナライズされるため、ツール上の順位と実際の画面は必ずしも一致しません。実際、2026年に入り、海外の実務者フォーラムでも「ツールの順位と人間が見る順位が乖離する」「単一の順位はもはや存在しない」という議論が出ています(参考:Local Search Forum)。

 経営者が本当に求めているのは、順位の監視ではなく、「来店・売上」と「日々の運用の省力化」のはずです。ここで効いてくるのが、皮肉にもGoogleが公式に提供しているデータです。Business Profile Performance API を使えば、規約に沿った形で、表示回数・電話タップ数・ルート検索数・ウェブサイトのクリック数・どんな検索語で見つかったか、といった“成果に近い数字”が取れます(参考:Google)。私たちがcoremeoで、順位の追跡よりも公式データの可視化と運用の自動化(口コミ返信の下書き、更新すべき項目のToDo案内など)にリソースを寄せているのも、この考え方によります。

おわりに

 2025年、Googleは技術・コスト・法務の3方向から、検索結果のスクレイピングを締め上げました。その水源に依存していた業界は同時に揺れ、サービスを終了するツールも出ました。今回のGoogle対SerpApi訴訟は、その象徴です(結論はまだ出ていませんが、リスクは表面化しました)。Googleがこの方向を緩める兆しは、いまのところ見当たりません。

 だからこそ、ツールを選ぶ側も、作る側も、「順位」という揺れやすい中間指標から、「成果と自動化」という本質へ軸足を移す時期に来ていると考えます。順位が上がらずお困りの店舗の方は、MEO対策の完全ガイドもあわせてご覧ください。自店の状況に合わせた進め方を相談したい方は、お問い合わせからご連絡ください。

参考・出典(一次ソース優先):
・Google 公式ブログ「Why we’re taking legal action against SerpApi’s unlawful scraping」(2025年、blog.google)/訴状ドケット Google LLC v. SerpApi, LLC, Case No. 4:25-cv-10826(N.D. Cal.、2025年12月19日提訴、Justia)/SerpApi 公式ブログ「Motion to Dismiss」(2026年2月20日、serpapi.com)/The Register
・JavaScript必須化:TechCrunchSEMリサーチ/SearchGuard解説 Search Engine Land/取得コストの増加 Search Engine Land「Is rank tracking dead?」
・num=100廃止:ナイル鈴木謙一氏/影響データ Search Engine Land/アーキテクチャ差 BrightLocal/GMO順位チェッカー終了 第三者記録
・国内MEOツール公式告知:ロカオプ 障害情報一覧
・公式API仕様:Places APIBusiness Profile Performance API

※ MEO:Map Engine Optimization の略。Googleマップなどの地図検索で店舗を見つけてもらいやすくする取り組みで、「ローカルSEO」とも呼ばれます。

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