この記事のポイント(結論を先に)
- 自院サイトの「患者さんの声」は、内容が正しくても掲載できません。ガイドラインは「広告が可能な範囲であっても、広告は認められない」としています。
- 第三者が運営する口コミサイトへの体験談は、誘引性が認められない場合は広告に該当しません。線引きはここにあります。
- 誘引性は、お金を払ったかどうかでは決まりません。厚生労働省のQ&A(A1-18)は、有償・無償を問わず肯定的な体験談の投稿を依頼すれば誘引性が生じるとしています。
「うちのサイトの“患者さんの声”は大丈夫か」。クリニックから受ける質問のなかで、いちばん多いものです。
この問いには、ガイドラインの原文で答えられます。根拠は医療法第6条の5第2項と、厚生労働省令第1条の9、そして医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日最終改正)です。
このガイドラインは名称が変わっています。現行は「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」で、令和8年3月30日最終改正です。「医療広告ガイドライン」という旧称で検索すると、古い版に行き当たることがあります。
結論:内容が正しくても、載せられません
ガイドラインの該当箇所を、そのまま引きます。
省令第1条の9第1号に規定する「患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告をしてはならないこと」とは、医療機関が、治療等の内容又は効果に関して、患者自身の体験や家族等からの伝聞に基づく主観的な体験談を、当該医療機関への誘引を目的として紹介することを意味するが、こうした体験談については、個々の患者の状態等により当然にその感想は異なるものであり、誤認を与えるおそれがあることを踏まえ、医療広告としては認められない。これは、患者等の体験談の記述内容が、広告が可能な範囲であっても、広告は認められない。
厚生労働省「医療広告等ガイドライン」(令和8年3月30日最終改正)(出典)
最後の一文が要点です。書かれている内容が事実であっても、広告可能な範囲に収まっていても、体験談としては認められないという書き方になっています。
なぜ自院サイトが「広告」になるのか
「サイトは広告ではないのでは」と考えたくなりますが、ガイドラインは明示しています。
ただし、当該病院等が自らのウェブサイト等に掲載する治療等の内容又は効果に関する体験談については広告に該当すること(その上で省令第1条の9第1号の規定に基づき禁止されること)。
厚生労働省「医療広告等ガイドライン」(令和8年3月30日最終改正)(出典)
自院のサイトに載せる時点で広告に当たり、そのうえで省令の禁止事項に該当する、という二段構えです。
禁止されているのは「治療の内容・効果」の体験談です
ここは正確に押さえてください。禁止対象は「治療等の内容又は効果に関する」体験談です。接遇や設備についての感想は、省令第1条の9第1号が直接に対象としているものではありません。
| 例 | 扱い |
|---|---|
| 「この治療で痛みがなくなりました」 | 治療の効果に関する体験談。掲載できません |
| 「先生の説明が丁寧でした」 | 治療の内容・効果の記述ではない |
| 「駐車場が広くて助かりました」 | 同上 |
ただし、後者であっても安全とは限りません。医療機関にとって有利な感想だけを取捨選択して強調すれば、誇大広告として問題になり得ます。「効果の話でなければ何を載せてもよい」とは読まないでください。
第三者の口コミサイトは、どこから「広告」になるのか
では、Googleマップや口コミサイトに書かれたものはどうか。ガイドラインは、なお書きで線を引いています。
なお、個人が運営するウェブサイト、SNS の個人のページ及び第三者が運営するいわゆる口コミサイト等への体験談の掲載については、医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼しているなどによる誘引性が認められない場合は、広告に該当しない。
厚生労働省「医療広告等ガイドライン」(令和8年3月30日最終改正)(出典)
鍵は誘引性です。患者さんが自分の意思で書いたものは、医療機関の広告ではありません。医療機関が関与して書かせたものは、広告になります。
お金を払っていなくても、誘引性は生じます
ここが実務でいちばん誤解されている点です。厚生労働省のQ&Aに、はっきり書かれています。
特定の医療機関の体験談に誘引性がある場合には、広告規制の対象となり、治療等の内容又は効果に関する体験談を掲載することはできません。例えば、医療機関が患者やその家族に(有償・無償を問わず)肯定的な体験談の投稿を依頼した場合は、当該体験談には誘引性が生じます。一方で、医療機関の検索が可能なウェブサイトに掲載された体験談が、医療機関からの影響を受けずに患者やその家族が行う推薦に留まる限りは、誘引性は生じません。
厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」A1-18(出典)
「謝礼を渡していないから大丈夫」は成り立ちません。無償でも、肯定的な内容を指定して依頼すれば誘引性が生じる、というのが厚生労働省の見解です。
| やり方 | 誘引性 |
|---|---|
| 院内で「良い口コミをお願いします」と依頼する | 生じる |
| 割引や粗品と引き換えに投稿を依頼する | 生じる(景品表示法の論点も加わります) |
| 患者さんが自発的に投稿する | 生じない |
よくある「抜け道」は、すでに塞がれています
厚生労働省の事例解説書には、実際に指摘された形が具体的に挙げられています。次のような形は、いずれも問題として扱われています。
- 口コミサイトに書かれた内容を、自院サイトに転載する
- 有利な口コミだけを抜粋して掲載する
- スタッフが患者を装って記載する
- 患者直筆のアンケートを画像やPDFにして掲載する
- 症例紹介のなかに、患者の主訴として体験談を書く
医療機関にとって有利な口コミを抜粋してウェブサイトに掲載している場合は誇大広告に該当する
厚生労働省「医療広告規制に関する事例解説書」(出典)
「自院サイトに載せられないなら、口コミサイトから引用すればよい」という発想は通りません。掲載場所を変えても、自院サイトに載せた時点で広告になるためです。
院内の運用に落とす3つのルール
- 自院サイトから、治療の内容・効果に関する体験談を外す。「患者さんの声」「お客様の声」というコーナー名でも、中身が該当すれば同じです
- 口コミの依頼をやめる。院内掲示、会計時の声かけ、QRコードの配布。内容を指定しない案内であっても、依頼にあたらないか確認してください
- 返信は事実の範囲で行う。お礼と、事実関係の訂正まで。返信のなかで治療の効果に触れると、医療機関自身の記述になります
なお、医療機関がクチコミに返信する行為そのものについて、ガイドライン上の直接の言及は確認できませんでした。上記は、返信も医療機関による記述である以上、同じ規制の考え方が及びうるという整理に基づく実務上の提案です。
この記事は、公表されているガイドラインとQ&Aの記述を紹介するものです。個別の表現が規制に触れるかどうかの判断は、所管の保健所や、医療広告に詳しい弁護士にご相談ください。
クリニックの集客そのものの進め方は歯科・整骨院・整体院のMEO対策に、口コミが表示されないときの切り分けはGoogleのクチコミが消えた・反映されないときにまとめています。
参考・出典
参考・出典:
・厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」(令和8年3月30日最終改正):https://www.mhlw.go.jp/content/001683594.pdf
・厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」:https://www.mhlw.go.jp/content/001683595.pdf
・厚生労働省「医療広告規制に関する事例解説書」:https://www.mhlw.go.jp/content/001683116.pdf
・厚生労働省「医療広告規制について」(掲載ページ):https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
・(2026年8月15日閲覧)
この記事に関連するよくある質問
自院のサイトに「患者さんの声」を載せてもよいですか?
治療等の内容または効果に関する体験談は、掲載できません。医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日最終改正)は「これは、患者等の体験談の記述内容が、広告が可能な範囲であっても、広告は認められない。」としています。内容が事実であっても、広告可能な範囲に収まっていても、体験談としては認められないという書き方です。
Googleマップの口コミは、医療広告規制の対象になりますか?
誘引性の有無で分かれます。ガイドラインは「第三者が運営するいわゆる口コミサイト等への体験談の掲載については、医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼しているなどによる誘引性が認められない場合は、広告に該当しない。」としています。患者さんが自分の意思で書いたものは、医療機関の広告ではありません。
謝礼を渡していなければ、患者さんに口コミを依頼してもよいですか?
いいえ。厚生労働省のQ&Aは「医療機関が患者やその家族に(有償・無償を問わず)肯定的な体験談の投稿を依頼した場合は、当該体験談には誘引性が生じます」としています。お金を払ったかどうかでは決まりません。
口コミサイトに書かれた良い口コミを、自院サイトで紹介するのはどうですか?
掲載場所を変えても、自院サイトに載せた時点で広告になります。厚生労働省の事例解説書は「医療機関にとって有利な口コミを抜粋してウェブサイトに掲載している場合は誇大広告に該当する」としています。転載、抜粋、アンケート画像の掲載、症例紹介内での主訴としての記載も、いずれも問題として扱われています。
クリニックが口コミへ返信するのは問題ありませんか?
医療機関がクチコミに返信する行為そのものについて、ガイドライン上の直接の言及は、当社が調べた範囲では確認できませんでした。ただし返信も医療機関による記述である以上、同じ規制の考え方が及びうると考えられます。お礼と事実関係の訂正までに留め、返信のなかで治療の効果に触れないことをおすすめします。個別の判断は、所管の保健所や医療広告に詳しい弁護士にご相談ください。

