この記事のポイント(結論を先に)
- 問題は「誰が管理しているか」ではなく「登録原簿に載っている名前が自社かどうか」です。まずWhoisで登録者名を見てください。3分で分かります。
- 業者が協力しなくても、それだけでは詰みません。JPRSの規則には、変更元が認証コードを渡さない場合にJPRSが登録者へ直接渡せる、という救済規定があります。
- ただしこの規定が助けるのは「登録者」です。登録者が制作会社のままなら、自社を助けてはくれません。そこが本当の分かれ目です。
ホームページの制作を頼んだとき、ドメインの取得も一緒にお願いした。その後、担当者が変わり、会社名も変わり、気づけば誰が何を契約しているのか分からない。中小企業では珍しくない状態です。
ドメインが止まると、サイトだけでなく会社のメールも同時に止まります。取引先に届かず、こちらにも届きません。影響が大きいわりに、確認は3分で終わります。順に見ていきます。
「ドメイン」「DNS」「サーバー」は別物です
話が混乱する原因は、この3つが同じ会社にまとめて任されていることが多いからです。ただし契約としては別物で、それぞれ移し方も違います。
| もの | 役割 | 止まると何が起きるか |
|---|---|---|
| ドメイン | 住所そのもの(example.co.jp) | サイトもメールも全部止まる |
| DNS | 住所と建物を結びつける案内板 | サイトとメールの行き先が消える |
| サーバー | 建物(サイトの中身が置いてある場所) | サイトが表示されない。メールは別契約なら生きる |
このうち、いちばん取り返しがつきにくいのがドメインです。サーバーは引っ越せますが、ドメインは名義が他社なら勝手に動かせません。
JPドメインは、必ず「指定事業者」を経由します
日本の .jp ドメインは、JPRS(日本レジストリサービス)が管理し、手続きは指定事業者を通す仕組みです。
JPドメイン名の申請はすべて指定事業者を通じて受け付けており、日本レジストリサービス(JPRS)に直接申請していただくことはできません。
JPRS「よくある質問(申請について)」(出典)
そして、ここが最初の関門です。
なお、ドメイン名の管理指定事業者は、そのドメイン名の登録者、または登録・技術の連絡担当者であることが確認できた場合のみお知らせしています。登録者、担当者以外にはお伝えすることができませんのでご了承ください。
JPRS「よくある質問(申請について)」(出典)
名義が自社でないと、「今どこが管理しているのか」すら教えてもらえないことがあります。調べる入口の時点で、名義が効いてきます。
混同されやすい3つの手続き
「ドメインを移す」と一言で言っても、中身は3種類あります。どれが必要かで、難易度がまったく違います。
| 手続き | 何を変えるか | 難易度 |
|---|---|---|
| 記載事項変更 | 登録者の住所や担当者名などの情報を直す | 低い |
| 移転登録 | 登録者そのものを別の人・法人に変える | 高い(現登録者の合意が要る) |
| 指定事業者変更 | 管理を担当する事業者を変える(名義はそのまま) | 中くらい |
制作会社名義になっている場合に必要なのは、真ん中の移転登録です。一番下の「指定事業者変更」だけでは名義は自社になりません。ここを取り違えると、手続きしたのに状況が変わらない、ということが起きます。
まず確認:Whoisで登録者名を見る
自社のドメインが誰の名義かは、公開情報から確認できます。
- JPRSのWhois検索を開く
- 自社のドメイン名(例:example.co.jp)を入力する
- [Registrant]または[組織名]の欄を見る
- あわせて[Name Server](DNSの担当)と、指定事業者の欄も控えておく
ここに自社名が入っていれば、まず安心です。制作会社名や、担当者個人の名前が入っていたら、この記事の続きが該当します。
汎用JPドメイン(example.jp)を個人で登録している場合、Whoisの登録者名が非公開になっていることがあります。表示のされ方は登録種別によって変わるため、見当たらない場合は登録時のメールや請求書から契約先をたどってください。
名義が自社なら、業者が非協力でも道はあります
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
管理業者を変える手続き(指定事業者変更)は、認証コード(AuthCode)を使って行います。この認証コードは、原則として今の管理業者を経由して登録者に渡されます。
登録者は、変更元の指定事業者へ認証コード(AuthCode)を確認してください。(中略)変更元の指定事業者から登録者へ、指定事業者変更の意思確認が行われます。
JPRS「ドメイン名の管理指定事業者の変更」(出典)
ここだけを見ると、今の業者が協力してくれなければ何も始められないように思えます。しかし、JPRSの規則にはその先が書かれています。
前項の指定事業者変更手続に関し、変更元管理指定事業者が認証コードの提供や指定事業者変更ロックの設定解除を適切に行っていないことを当社が確認した場合、当社は、当該汎用JPドメイン名の認証コードを登録者に提供し、また、指定事業者変更ロックの設定を解除することができる。
JPRS「汎用JPドメイン名登録申請等の取次に関する規則」第13条第4項(2022年9月6日改訂・同年11月13日実施)(出典)
変更元が協力しない場合、JPRSが登録者に直接コードを渡せる、という規定です。属性型・地域型(co.jp など)にも同じ趣旨の条文があります。
つまり、行き詰まる本当の分かれ目は「制作会社が協力してくれるかどうか」ではありません。登録原簿に載っている登録者が自社かどうかです。この救済規定はいずれも「登録者」を助けるものだからです。登録者が制作会社のままなら、この条文は自社を助けてくれません。
名義が制作会社だと、何が変わるのか
登録者が他社のままだと、必要なのは移転登録になります。これは登録者を変える手続きで、現在の登録者(制作会社)の関与が前提です。前章の救済規定は、登録者を助けるものであって、登録者でない人を登録者にする仕組みではありません。
co.jp などの属性型JPドメインは、さらに条件が付きます。登記された法人であることなど、登録できる組織の条件が種別ごとに定められているためです。合併や社名変更が絡むと、必要書類も増えます。
.com など(gTLD)は、ルールが別体系です
.com や .net は日本のルールではなく、ICANNの移管ポリシーが適用されます。実務で効いてくる違いを挙げます。
- 移管に制限期間がある。取得直後や、直前に移管した直後は移せない期間が設けられています
- 登録者名の変更(Change of Registrant)と、業者の変更(Inter-Registrar Transfer)は別の手続きです。順番を誤ると、名義変更の直後に移管できない期間に入ることがあります
- 料金の未払いをめぐる争いは、移管を拒む理由として認められていません。JPドメインとは事情が異なります
日数や条件の細部は改訂されることがあるため、実際に動かす前にICANNの現行ポリシーで確認してください(Transfer Policy)。
更新が止まると、どうなるか
もっとも怖いのは、名義が他社のまま担当者が辞め、更新の請求書が誰にも届かなくなることです。ドメインは期限を過ぎると停止し、一定期間が過ぎると第三者が取得できる状態になります。
第三者に取得されると、同じ住所で別のサイトが公開されます。取引先から見れば、貴社のドメインのままです。ここまで来ると、費用の問題ではなくなります。
猶予期間の日数は、JPドメインとgTLDで異なり、登録種別によっても変わります。記事の数字を当てにせず、自社の登録先で確認してください。
発注時に決めておく3行
これから制作を頼む場合、契約書か発注書にこの3行を入れておくだけで、将来のほとんどの揉め事が消えます。
- ドメインの登録者は、当社(発注側)の名義とする
- 契約終了時、認証コードとDNSの設定内容を、遅滞なく当社へ引き渡す
- 更新の請求と期限の通知は、当社の代表メールアドレスにも送る
すでに任せきりになっているサイトは、更新が止まっていないかもあわせて確認しておくと安心です。外部から確認する手順は制作会社に任せきりのWordPress、更新されていますかにまとめています。IT全般の体制づくりは中小企業のIT・DX完全ガイドをご覧ください。
参考・出典
参考・出典:
・JPRS「JPドメイン名の管理・運用の仕組み」:https://jprs.jp/about/dom-rule/framework/
・JPRS「よくある質問(申請について)」:https://jprs.jp/faq/application/
・JPRS「ドメイン名の管理指定事業者の変更」:https://jprs.jp/about/dom-rule/agent-change/index.html
・JPRS「汎用JPドメイン名登録申請等の取次に関する規則」(2022年9月6日改訂・同年11月13日実施):https://jprs.jp/doc/rule/toritsugi-rule-wideusejp.html
・JPRS「JPドメイン名の種類」:https://jprs.jp/about/jp-dom/spec/
・ICANN「Transfer Policy」(2024年2月21日版):https://www.icann.org/resources/pages/transfer-policy-2024-02-21-en
・(2026年8月15日閲覧)
この記事に関連するよくある質問
会社のドメインが制作会社の名義かどうか、どうすれば分かりますか?
JPRSのWhois検索に自社のドメイン名を入力し、登録者(Registrant/組織名)の欄を見てください。3分で確認できます。あわせてネームサーバーの欄と指定事業者も控えておくと、後の手続きが楽になります。
制作会社が移管に協力してくれません。もう取り戻せませんか?
登録者名義が自社であれば、それだけでは詰みません。JPRSの規則には「変更元管理指定事業者が認証コードの提供や指定事業者変更ロックの設定解除を適切に行っていないことを当社が確認した場合、当社は、(中略)認証コードを登録者に提供し、また、指定事業者変更ロックの設定を解除することができる」という規定があります。ただしこれは「登録者」を助ける規定なので、登録者が制作会社のままでは使えません。
ドメインとDNSとサーバーは、何が違うのですか?
ドメインは住所そのもの、DNSは住所と建物を結びつける案内板、サーバーは建物です。契約はそれぞれ別で、移し方も違います。止まったときの影響も異なり、ドメインが止まるとサイトだけでなく会社のメールも同時に止まります。
ドメインの「移管」と「名義変更」は同じことですか?
違います。登録者そのものを変えるのが移転登録、管理する事業者を変えるのが指定事業者変更です。制作会社名義になっている場合に必要なのは移転登録で、指定事業者変更だけでは名義は自社になりません。ここを取り違えると、手続きしたのに状況が変わらない、ということが起きます。
これからホームページ制作を依頼します。ドメインについて何を決めておけばよいですか?
契約書か発注書に3行入れてください。1つめ、ドメインの登録者は発注側の名義とする。2つめ、契約終了時に認証コードとDNSの設定内容を遅滞なく引き渡す。3つめ、更新の請求と期限の通知は自社の代表メールアドレスにも送る。この3行で、将来のほとんどの揉め事が避けられます。

